拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
~レオン視点~
「レオン様! 私は悪くないの! そこのシオンに騙されて」
「嘘をつくと更に罪が増えるだけだ。シオンとお前の供述が全く違う。#伯爵家__リュシエンヌ__#の使用人からお前が実行犯だと供述を得た」
「ひどいですわ! 片方の意見だけを信じるなんて! 私とレオン様の仲ではないですかっ!」
「お前が差し入れをしていた怪しい食べ物だがようやく解析結果が出来た。焼き菓子にアヘンを混ぜるなんてどんな神経をしているんだ!」
ぱっと見は全くわからないし、このオンナから渡されたものではなかったら口にしていたかもしれない!!
「そんなものは入れてないわ! 小麦粉と強壮剤、」
強壮剤?!
「中毒性のある悪の華を使ったものだ!」
分析結果のレポートをオンナの前に出した。
「……う、うそでしょ? 嘘よ。だって、」
「試食で頭がイカれたからそういった行為に出たのだろう。ヤク中としてお前は専門の刑務所へ入れることになる。お前の執着や思い込みや強烈な性格はヤク中によるものかもしれん。徹底的に調べることになるから覚悟しておけ」
歳の割に皺があり、目の下にクマがはっきりとある。化粧で誤魔化しているつもりでも時間が経てば崩れる。こうやってみると違和感だらけだ。みるみるうちに目が血走っていく。
「いやよ! 私はレオン様と一緒になるのっ。レオン様は私のヒーローで」
「煩いな、お前は私の顔が好きなんだよな?」
顔が好きだと言われ続けていた。このオンナはただそれだけ。他の好みの隊員にもそう言い差し入れを渡していた。念の為口にしないようにと言ってあるが……
「……レオン様?」
懐から短剣を出し、自ら頬に短剣で斬りつけた。
「きゃぁぁっ…………」
「これで私の事は忘れろ」
「レオン様のかお、私のすきな、レオン、さ、ま」
泡を吹いて倒れた。それを見てバカバカしく思えた。ここにきても私の顔だと? お前の好みの顔に生まれたからこんな事が起きたのか……くそっ!
パタンと扉を閉めた。うなされているようだが、知らん。
「目を覚まして五月蝿いようなら猿轡でもつけとけ。ソレル子爵に連絡は付いたか?」
「はい。もうすぐ到着するかと」
「分かった」
……良いよな、グレイは。内面を見てくれて尚且つ、瞳が綺麗だとか声が素敵だとか知性があって……なんて言ってくれるリュシエンヌちゃんがいて! 若いしキレイだし可愛いし、控えめで、お菓子作りまで……
言っちゃなんだがめちゃくちゃタイプだ! どこで出会うんだよ! この件が片付いたら絶対に婚活をする!! 私の中身を見てくれる子を見つけるぞ。
とっとと終わらせる為に、シモンの元へと行く。婦女暴行未遂及び誘拐は騎士として男として許される事ではない。