拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
あのオンナに騙されたと言っているが、だからどうした? と言いたい。それにグレイに嫉妬していた。なんて通用するわけがない! 廊下を出るとちょうどグレイと会った。
「シモンの件だが、」
「上に伝えておいた。騎士団を除籍とし辺境に移動だ。あそこは魔獣被害が未だ続いているから腕の立つ奴が行く事に反対はなかった。シモンの父親に連絡をしたらすぐに来た。応接室にいるから話に行くぞ」
「おう」
グレイは流石に仕事が早い。
「ところでその顔はどうしたんだ?」
そろそろ血が止まる頃だ。表面しか切っていないからな。その方が血が出て驚くだろう?
「ちょっとな……」
「必ず医務室へ行けよ」
なんとなくグレイは察したのかそれ以上は言わなかった。