拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
シオンの父親が待っている応接室へ行く。何があったのか理解していない父親に経緯を話した。
「息子が申し訳ありませんでした。騎士として、人としてあり得ない行動をした#息子__シオン__#の貴族籍を抜き平民とします。魔獣被害のある土地で人助けができるのなら……騎士ではなくなりますが、あの子に剣を持たせてくださるのであれば……」
騎士になるのが夢で子供の頃から努力してきたと言う。確かに腕は立つ方だ。
「命の保証は有りませんし、平民登用となると何かあった時の保証も貴族より劣るでしょう。ご理解いただけますか」
レオンが説明すると頷く父親。
「はい。婚約者のいる令嬢に懸想し、攫うなど許される行為ではありません。親である私の責任でもあります。私は引退し長男に爵位を譲りできる限り相手の方に慰謝料も支払います」
……大きな金額が動いたり、急な当主変更は何かあったのだと噂に上がりかねない。
それを分かっている伯爵家は慰謝料の請求をしないと言った。
私の婚約者を攫ったとも言わない。足がついては困る。
「相手の家は慰謝料を望んでいません。その代わり今日会ったことは他言無用でお願いします。ここにサインを」
騎士団の掟を破り平民となり辺境へ遣わす内容。決して今日の事を誰にも言ってはならない。それを破ると一族の連帯責任とする。穏やかに書いてあるが、これは一族皆殺し。と言っているようなものだ。サインに血判もさせた。
その後、シオンの様子を見に地下牢へ行くとぐったりとしていたが謝罪はなく、リュシエンヌに会わせろと言っていたが会わせるわけないだろうが……
「お前の顔を見るのはこれで最後だ。お前が私に勝つ日は一生ない。自分の浅はかさを恨むんだな」
本当はボコボコにしてやりたいが、隊長として、騎士としてそれは出来なかった。ここでも落ち着いている自分が嫌になる。