拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

『これは騎士団内部で起きた不祥事だ』
『そうだな。騎士団の中でこんな事件が起きたなんて世間にバレたら困るよな』


 やはりそうなりますわよね。私はレイ様の隣に立つに相応しく無い。

 
『モルヴァン嬢はもはや傷物ですし、二度婚約破棄されたからと言って世間はなんとも思いませんわ! シオン様が責任を取って新たに婚約を、
『黙れ。その減らず口を叩けないようにするぞ。リュシエンヌが傷物? 二度の婚約破棄? ふざけたことを吐かすな!』


 レイ様……こんな私だけど許してくれるの?




『レオン、人を遣すからこの二人を王宮の地下牢へ連れて行ってくれ。話は通しておく』


 とにかくこの二人と同じ空間に居たくなかった私はひとまずほっとしました。それからレイ様の執務室へ行きました。


『遅くなってすまない……何があったか言える範囲で良いから教えてくれないか? リュシエンヌを守るどころかこんな事件に巻き込まれて。隊員が起こした事は私の責任でもある。すまなかった』

 頭をふるふると左右に振った。

『…… 頼りなくてごめんな。嫌になっただろう』

 私がレイ様を嫌になるわけがありませんのに。レイ様は私を嫌になってない?

『……レイ様は私の言葉を信用してくださりますか?』


『当たり前だろう。何があった?』

『レイ様が助けに来てくれるほんの少し前まで私は眠っていました。その間のことは分かりませんの。目が覚めてからはあの方に抱きつかれたのは間違いありませんし、手にキスをされて……』

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