拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
『レイ様は悪くないの! 私が油断をして、』
『リュシエンヌは黙りなさい。騎士団でこういった事が起きたということが問題なんだ! グレイソン殿どうなんだ!』
こんなに怒っているお父様を初めて見た。すごく心配させたのだと反省しました。でもレイ様は悪く無いの。お母様は私の顔を見てホッとしたようで力が抜けていたけれども私を抱きしめてくれた。
『……はい。隊員が騎士団でやらかした事は私の責任といえます。いかなる罰でも受けます』
罰って? 別れるなんて絶対にいや。
『絶対にこの事が世間に漏れないようにしろ! リュシエンヌを守ると約束したよな!』
『それは勿論のことです。この件に関して知っているものは私の部下で副隊長レオン、実行犯の二人、伯爵家の使用人二人です。連行するにあたって携わった騎士達は内容は知りません。規律違反を犯した騎士を捕らえたとなっています。騎士団本部に報告する義務はありますが、令嬢が関わっていますので漏れることは有りません』
レイ様が深々と頭を下げたていた。私のせいなのに……
『リュシエンヌ、怖かったよな。よく無事でいてくれた……』
お父様は私には優しくていつもの変わらない……いいえ。小さな子供のように頭を撫でられました。ごめんなさいお父様、お母様。
『リュシエンヌはこんな事があって、グレイソン殿を信用出来るか? 一緒にいる価値のある男か?』
『お父様、わたくしはレイ様の事を信用しています。レイ様は絶対に助けに来てくれると思っていました。レイ様も辛い思いをされたのですわ。レイ様と一緒にいます』
今日も明日もずっとレイ様といたい。私はレイ様じゃないと嫌なのですわ。
『おい……もしリュシエンヌをまた危険な目に遭わせでもしたらその命に変えて償ってもらうから覚悟しておけ』
『……約束します』
こんな時もレイ様は素敵で更に好きになってしまう。お別れなんてしたくない。
『リュシーがグレイソン様といたいと言うのならそうさせてあげましょう』
お母様は女同士だから私がどうしたいかって分かってくれているんだわ。
『すみませんが、まだ時間が掛かるのでその間はこの部屋に居てください。リュシエンヌを頼みます』