拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
たまたまリュシエンヌの婚約者が私と同じクラスで、クラスメイトにリュシエンヌの話をしているところに遭遇した。
『そんなにリュシエンヌが良いか? それなら婚約者を譲ってやろうか?』
……はぁ?
『見た目は美しいかもしれないが、嫉妬深い女はダメだ。親戚と親しくしているだけで注意するような女だ。愛情に飢えているのかもしれん』
……はぁ?
『あいつとは家同士が決めた婚約者だから、気に食わないんだよ。はじめは良いなと思った事もあったが、男を立てるという気遣いが出来ないんだ』
お前が隣に立つ器ではないんだろうが! 努力をしろ!!
『婚約破棄できるならとっととして、自分に合った可愛い気遣いのできる子と婚約をしたいね』
……待てよ? それなら……
それからクラスメイトという事もあり、リュシエンヌの婚約者アルバート・レフィ・コリンズと話をするようになった。婚約破棄したい。それなら立ち会いしてあげるよ。と悪魔の囁き。
飛びついてきたアルバート・レフィ・コリンズ。卑怯かもしれないが、これで彼女に婚約者はいなくなった。
それから婚約破棄の立会いをして、たまたま行った視察先で彼女に会った。私の顔を見て驚く顔も美しく心が躍った。
弟と図書館に来ているらしい。あの時雨宿りをしていた弟か……本当に姉弟仲が良いんだな。仲が良すぎるのもどうかと思うのだが……出かけるのなら妹の方と行くものだろう!
「殿下そろそろ……」
「あぁ、すまない。視察の途中だったな。知り合いにあったものだから声を掛けたんだ」
「……モルヴァン伯爵令嬢ですか?」
「そうだよ。何か?」
「いえ、確か婚約破棄されたご令嬢でしたよね。元気そうでしたので……」
そうか。この男は私が立会いをしたのを知っているのか。これはあまり良くないな……立会いをしたと公にしないでくれ。と言った。噂になっては困る。