拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
なんですと
「やぁ。待っていたよ」
「殿下、本日はお招きいただき誠に有難うございます」
ここは王宮。きちんと礼をしなくてはいけません。殿下と約束をしてしまったので、侍女とメイドと護衛を連れて行くようにとお父様に言われました。人数が多すぎても少なすぎても失礼に当たりますし、伯爵家令嬢ごときが使用人をぞろぞろと連れて歩く訳にもいけませんし……。
「誘ったのは私だから、気にしなくて良い。学園の友人として君を招待しているのだから、殿下ではなく名前で呼んでくれたら嬉しいかな」
……殿下を名前で呼べと? 無理です。返事を返さず微笑んでいた。友人? も無理です。
「これは手強いな……リュシエンヌ・モルヴァン令嬢」
……手を? 出せと仰るのですか?! 私は人目につきたくないのです! どうしましょう!
「……殿下? 友人にエスコートは必要ありませんわ」
「私は友人だと言ったのに返事がないから令嬢としてエスコートしようと思ったんだけど、これも違うの?」
……あぁ言えば、でもエスコートは困ります。二択なのなら……
「エリック殿下とお呼びしても宜しいでしょうか……」
「もちろん嬉しいよ。殿下はいらないんだけど、」
「それは、ちょっと……殿下の名前をお呼びするだけでも畏れ多いのですからお許しくださいませ」
「そっか……いつか慣れたら省略して欲しい。私は君のことをなんて呼べば良いかな?」
「友人は皆、名前で呼んでいますわ」
「そう? それではリュシエンヌ行こうか?」
……呼び捨てですか。まぁ構いませんが。王宮の敷地内にある王宮図書室まで歩いて行きます。殿下の侍従の方と護衛の方もいますので結局は大人数になってしまいましたわ。
王宮の図書館に行きますと入館できるようになっていました。入館許可証は次回名前を言えばくださるのだそうです。殿下は本当に申請して下さっていたのですね。これは有難いですわね。一ヶ月かかるはずか、一週間も掛からないなんて! 学園が早く終わった時に来てもよろしいですし、学園が休みの日にも! 憧れの王宮図書館ですもの。