拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さすが王宮図書館です
それから学園で殿下に会うたびに声をかけられるようになりました。
「リュシエンヌおはよう。良い天気だね」
「おはようございます。本当にいいお天気ですわね」
一緒にいた親友セシリーは驚いていましたわ。急に殿下に声をかけられたのですから……頭を下げて挨拶をしていました。
「リュシエンヌの友達? ここは学園だから畏まらなくて良いんだよ? 急に声をかけて悪かったね。ところで次に王宮図書室に来る予定はある?」
「週末に行きたいと思っています」
「そうか! 良かったらランチを一緒にどうかな?」
……どうと言われましても、いえ、お断りしましょう。
「申し訳ございませんが、前回は本のタイトルだけを見て満足してしまいましたので今回は本を読みたいと思っておりますの」
「……そうか。それなら終わった後にお茶でもどう? 迎えに行かせるから」
……断れないということですか? セシリーもいるので殿下のお断りを無下には出来ませんわね。
「少しでしたら」
「楽しみにしているよ、それじゃあ週末に」
手を振り去っていく殿下の後ろ姿をセシリーと見送る。
「リュシエンヌ、いつ殿下と気安くお話しする仲になったの?」
気安い感じはないのだけれど……緊張もしますし、よく分かりませんし。
「婚約破棄の時に殿下が立会いをしていて……殿下はコリンズ子息と友人だったの。その後謝罪を受けて……殿下が何を思っておられるのか全く分からないのだけど、悪い方ではないと思うの……」
親友のセシリーには素直に伝えておくことにします“悪い方ではないけれどよくわからない人”です。
「今の話し方だと殿下はリュシエンヌに気があるようにも思えるけれど……」
「それはないわよ! 婚約破棄の立会をしたのよ? 婚約破棄された子に気があるもの好きがいると思う? もしそうなら……悪趣味ね」
「……そうね。ないわ、ごめん」
……ぷっ。ふふふっ……二人で笑いあいました。あり得ませんもの。