拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
「……しかし私は許されない事をしてしまいました。令嬢の一生が決まる婚約破棄に手を貸した。これは重大なミスです。リュシエンヌ嬢が私と婚約を快諾してくれた暁には必ずリュシエンヌ嬢を幸せにすると誓います。どうかチャンスを頂けませんか!」
なりふり構っていられない。
「……娘の気持ちを優先してくれる事。婚約の打診をしているという事を公にしないで頂きたい。貴方が婚約を打診している。と言うと我が家は断れません。今のところ貴方を信用していませんから、また王子としての権力を使ったのなら……国を敵に回してもリュシエンヌと婚約させることは致しません」
「わかりました。婚約の打診は公にはしない。と誓います」
娘を愛する父親の強い決意のようなものを感じた。
「約束してください」
「はい。リュシエンヌ嬢が婚約しても良い。と思えば許可してくださる。それでよろしいですか?」
「……はい。付き纏いや人の目に触れるような行為、高価なプレゼントなども遠慮してください」
「伯爵は警戒心が強いですね……配慮します」
口説く許可を得た。という事で良いのだろうか。モルヴァン伯爵侮れない人物だ。
制約が多いな……
「話は終わりでしたら私はこれにて失礼致します」
伯爵が立ち上がり礼をしてきた。私もすぐさま立ち上がり挨拶をする。
「本日はお呼び立てをして、申し訳ございませんでした。また、お会いできる事を楽しみにしています」
きた時より疲労感が顔に出ている伯爵に挨拶をしてその後、伯爵は部屋を出て行った。
「まさか断られるとは……」
ポツリと呟く。悪趣味か……そうだよな。あの時は焦っていて婚約破棄をさせることに成功したがその後のことをもっと考えるべきだった。