拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
ソファにたくさんクッションを置いて(囲まれて)いるので痛みは抑えられますし、ふんわりとしたワンピースを着ているので押さえつけられることもないので、大丈夫でしょう。何かあっても家ですしね! なんとかなりますわ。
セシリーが来た。と連絡を受けましたが、出迎えることは出来ませんのよ……階段の上り下りが辛いのです。階段の上り下りってお尻と腰の負担がすごいと言うことを学びましたわ……安静が一番ですわ。
「リュシエンヌ! 久しぶりね」
「セシリー心配掛けてごめんなさいね」
数日ぶりに会うだけなのに懐かしく感じてしまいますわ。セシリーはクラスの友人達からの手紙を持って来てくれました。それと差し入れと言い、人気の菓子店の焼き菓子と行きつけの裁縫店で新色の刺繍糸が出たようでそれも持ってきてくれました。持つべきものは親友ですわね!
「あの後殿下が不審に感じたようで、リュシエンヌが転んだところを調べていたら三人の令嬢が現場に来て、隠れたらしいの。するとキョロキョロと汚れた場所を掃除し始めたらしくて怪しさ倍増よね。普通は汚れていても自分で掃除しないもの。人を呼ぶわよね」
……犯人は現場に戻ってくる。っていうのは実際にあることなんだわ。妙に納得してしまいましたわ。
「掃除をしながら、リュシエンヌの話をしていたものだから殿下と側近の人に聞かれたそうよ。側近の人が先生を呼んで令嬢達に事情聴取して発覚という感じらしいわね」
「殿下の手紙には書いていませんでしたわ」
「聞き耳立てていた事を知られたくなかったんじゃない? それより調子はどう?」
「……まだ、回復には時間がかかりそう」
「そんなに捻ったの? お医者様はなんて?」
「セシリーにはきちんと言うわね。実はぶつけたところはお尻なの……」
「え? お尻」
「えぇ。真相はわかっているとのことだから肩がぶつかって尻餅をついたの。思いっきり転んだものだから痛くてね……馬車に乗れないから学園にいけないのよ」
「……それは深刻ね、っ。ぷっ……お尻って……」
「笑い事ではないのよ! 本当に痛くてね、馬車の揺れで痛くて吐き気はするし大変だったんだから! 歩くとお尻と腰に響くし階段も時間が掛かるのよ」
二人で笑い合った。令嬢の話に何回お尻の話が出てくるのか……セシリー以外とはこんな話できませんもの。
「あぁ、リュシエンヌが元気で良かったわ。これ授業のノートよ。まぁリュシエンヌは授業なんて聞かなくてもトップクラスから落ちることはないと思うけれど」
「授業をきちんと聞いているからテストの範囲が分かるのだもの。勉強は好きだし、学年で一位になりたいとかそこまでの野望はないわよ?」
趣味の刺繍や古代語の勉強もしたいし地盤についても調べたいし、勉強だけが人生ではないもの。いつか役に立つことはあるだろうけど、先生になりたいわけではないから、勉強はそこそこで良いのよね。
「うん、私はわかっているから大丈夫」
「? その含めた言い方ってなにかあるの?」
セシリーが言うには上級生が最近私の良くない噂を流しているのだそうです。