拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
【父×陛下】
「こんな時間に呼び出して悪かったな。来客がいるので中々時間が取れない。しかし早いほうがいいと思ってな、気が気ではなかったのだろう? 調べがついたぞ」
陛下にこっそりと呼び出される。呼び出された場所は閉館中の王宮図書館だった。遅い時間だったが断る術もない。
「いえ。こちらがお願いしたことですから何時でも参上致します。もう調べがついたのですね。さすが陛下」
少し話が大きくなっているが、陛下はご立腹の様子でエリック殿下が立会いをしていた事に対して謝罪をされた。
「親として申し訳ない。コリンズ伯爵にも事情聴取したのだが、子息が悪いと言ってそこは引かなかった。リュシエンヌ嬢に非がない限りコリンズ伯爵家の有責だ。と頑固で、真面目な男だから仕方がないな。子息が罰を受けているのに、エリックに罰がないのはおかしいだろう? しかしここで幽閉などさせてもコリンズ伯爵も気まずいだろうから、エリックは国から出す事にした」
国から出す? あの話を受けるのか? そう思い陛下の顔を見る。
「そうだ。リル王国の王女と結婚させる事にする。悪い話ではないからな。今他国からの客人を招いておるから、客人にも話をしておいた。リル王国は小国だが資源豊かで隣国が狙っていて攻められでもしたら成り行かん。同盟を結びわが国が付いたと思われれば攻めることも出来ない。滅びたいのであれば好きにすればいいが、そこまでバカではないだろう。この話を聞いて悔しがることだろうな」
王配になるのか……確か王女は二十二歳、姉さん女房の方があの殿下には良いのかもしれないが……
「それで宜しいのですか? 陛下にとっては大事なご子息……王子ではありませんか……私達が陛下に相談をしたばかりに、」
「息子だからこそ許せない事もある。私達王族は国を守り国民を守る義務がある。故に自我を犠牲にする事もある。人を蹴落として得た幸福など何になる? 一生かけてリュシエンヌ嬢に寄り添い罪を償うなど、息子以外誰が得をするんだ?」
……おっしゃる通りなのだ。
「娘を思う其方の気持ちと、王子の行動に対する意見として聞き入れただけだ」