前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
足音の主は扉を開け、大柄な体を揺すって貯蔵庫の中へと入ってきた。
「――あれ? なんかある〜」
すぐにこちらに気づいたらしく、人影が近づいてくる。逆光で、公花から相手の顔はよく見えない。
息を殺したまま固まっていると、檻がひょいと持ち上げられて、ぬっと大きな顔に覗き込まれた。
「わー、可愛いねずみちゃん。どうしたの? 捕まっちゃったの?」
巨漢といっていい体格に、面積の広い顔。大きさに対してつぶらで小さく見える瞳……なんだか見たことのある顔だ。
(あ! この人……うちの庭の倉庫を壊した人!)
たしか樋熊と呼ばれていた大男だ。
あの日とはだいぶ表情が違い、ニコニコと人畜無害な雰囲気を漂わせているが、騙されない!
『シャーーーッ!』
公花は怒って威嚇したが、相手は気に留める様子もなく上機嫌だ。なんだかのほほんとして、殺気の欠片もない。
「可愛いなぁ。クロが捕まえたのかなぁ。ここにあるってことは……まさか今晩の食材にでもするつもりで?」
ひい! やめて食べないで!
途端に目の前の彼の笑顔さえホラーじみたものに見えてきたが、素朴な風貌の彼は、実に穏やかな声音で言った。
「な〜んてね。可哀想だから逃がしてあげようね、ウンウン」
クマちゃん、良い人!
彼はきっとお酒で悪酔いするタイプ。あの日は銀鱗の力で暴走していたのだろう。
初犯だし、ひとまず倉庫損壊の件は許してあげることにする。
「――あれ? なんかある〜」
すぐにこちらに気づいたらしく、人影が近づいてくる。逆光で、公花から相手の顔はよく見えない。
息を殺したまま固まっていると、檻がひょいと持ち上げられて、ぬっと大きな顔に覗き込まれた。
「わー、可愛いねずみちゃん。どうしたの? 捕まっちゃったの?」
巨漢といっていい体格に、面積の広い顔。大きさに対してつぶらで小さく見える瞳……なんだか見たことのある顔だ。
(あ! この人……うちの庭の倉庫を壊した人!)
たしか樋熊と呼ばれていた大男だ。
あの日とはだいぶ表情が違い、ニコニコと人畜無害な雰囲気を漂わせているが、騙されない!
『シャーーーッ!』
公花は怒って威嚇したが、相手は気に留める様子もなく上機嫌だ。なんだかのほほんとして、殺気の欠片もない。
「可愛いなぁ。クロが捕まえたのかなぁ。ここにあるってことは……まさか今晩の食材にでもするつもりで?」
ひい! やめて食べないで!
途端に目の前の彼の笑顔さえホラーじみたものに見えてきたが、素朴な風貌の彼は、実に穏やかな声音で言った。
「な〜んてね。可哀想だから逃がしてあげようね、ウンウン」
クマちゃん、良い人!
彼はきっとお酒で悪酔いするタイプ。あの日は銀鱗の力で暴走していたのだろう。
初犯だし、ひとまず倉庫損壊の件は許してあげることにする。