前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 お互いに、「以前お会いしましたね」「そうですね」で片づけていい事象とは思えない。

 偶然ではないとしたら、なぜ、自分たちは出会ったのだろう。
 なにかの縁を感じざるをえないが――。

 まぁ、焦る必要はない。
 一緒にいれば、またなにか思い出すかもしれないし……。

「うーん、うーん」

 と、大きすぎる独り言が耳に届き、手元に開いていた本から視線を上げた。
 いまや全興味の対象である前世ハムスターの少女は、目の前の席で変な顔をして唸っている。

「どうした? 問題は解けたのか」
「無理ぃ……頭から煙が出そうです、剣先生……」

 放課後、図書室の一角に陣取って勉強を教えているのだが、与えた課題でなにがそんなに難しいのか、正直さっぱりわからない。
 頭はかなりのドあ……ごほん。勉強は得意ではないらしい。

 退学のおそれがあるほどのバ……勉強を苦手としているらしいが、彼女に去られては困るので、全力で阻止せねばならない。

(まぁ、この俺にかかれば、すぐに理解できるようになるだろう)

「どこがわからない? 見せてみろ」
 彼女のノートを覗き込んで、「んっ?」と目が点になる。

「……なんだ、このXXって」
「え? だって、Xを左から右に移項したから……」

「普通に2Xと書けばいいだろう」
「あっ、それでいいんだっけ」

 答え合わせを進めるごとに、眉間の皺が深くなる。
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