前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「方程式の解き方から教えなおさないといけないのか……。ん? こっちの問題は……どこをどうしたらこうなるんだ」
「え~っと、雰囲気で……」
「ちゃんと公式を使え! 覚えろ! さっきの解説を聞いていたのか? この頭お花畑の生ハム宇宙人が!」
「ぴえぇぇ」

 こんなにどんくさい人間は初めてだ。
 俺の不完全な記憶の中でも、ここまで絶望的な試練はほかにあるまい。

 目の前の超人的な愚か者の眉間を指先でぐりぐりとやりながら、やっぱり先ほどのイメージ映像は美化しすぎていると悟った。
 イージーモードだった人生にスパイスを加えるにも、ほどがある。

 腹いせに公花をいじめていると、横から近づいてくる気配があった。

「あの……蛇ノ目くん」
 声をかけられたほうへ視線を向けると、頬を赤らめた女生徒がそばに立っていた。

(はぁ、またか)
 公花とこうしていると、毎回、何度となく邪魔が入るのだ。

「今は取り込み中なんだけど、なにかな?」
「あの……ちょっとお話したいことが……」

 用件はわかっているのだが、優等生として振る舞っている自分は、表向きは無下(むげ)にするわけにもいかない。
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