前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 桃子ママはホッとした様子で、鍋を火にかけたままだったことを思い出したのか、慌てて台所へと戻っていった。

「あぁ、いいもの見たねぇ」
 おばあちゃんも満足そうに、ソファの定位置へと戻っていく。

 公花は洗濯物を取り入れながら、
(びっくりしたけど、おばあちゃんが嬉しそうだから、よかった。白蛇さん、ありがとう)
 と内心で礼を言った。

 まぁ、生き物の相関図的に、苦手なものは苦手なので、もしまた来られても困ってしまうのだが――。

       *

 地域では知らぬ者のいない名家、『蛇ノ目家』――。
 重厚な日本家屋、頑丈な門構え。塀沿いには無粋な防犯カメラが目を光らせている。

 都会の喧騒から離れた、閑静な高級住宅地に、その大邸宅はあった。
 剣を乗せた黒塗りの車が、敷地内に入って停車する。

 運転手が先に車から出てきて、ぐるりと回り込んで後部座席の扉を開ける。
 剣が顔を見せ、車の外に降り立った。

 敷石の脇にずらりと並んで待ち構えていた黒服の使用人たちが、剣に向かって頭を下げる。

 玄関先で迎えるのは、貫禄のある年配の女性――エラのように張った頬、曲がった腰、両目の位置が離れ気味で、どこか蛙を連想させる顔立ちをした和装の老婆が、杖をついて立っている。

 老婆は、数歩前に進み出ると、剣に対し、視線を伏せた。
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