前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 ――同時間帯、蛇ノ目剣は、三階の教室の窓際の席で、英語の授業を受けていた。

 担当の教師が英文の音読をしながら、机の間を巡回している。

 換気のために開けた窓の隙間から、外で体育にいそしむ生徒たちの賑やかな声が流れ込んでくる。

 そっと視線を校庭に向けると、公花が相変わらずちょこまかした動きで頑張っていた。

 そばにいるとイラッとして口出しせずにはいられないが、こうして遠くから眺めているぶんには、動きがユニークで面白い。
 クラスの連中ともうまくやっているようだ。憎めない性格だし、周りを囲む人々の縁にも恵まれる、そういうやつだ。

(あいつを見てると無性に……いじめたくなるんだよなぁ……)

 授業中だというのに、知らず口角が上がっていることに気づいて、唇を結びなおした。

(……?)

 教師がすぐそばを通りかかったので、教科書の上に視線を戻したが、どうしてか白っぽく視界が霞んでいて、アルファベットがよく見えない。
 眉間に指をやり、揉んでみる。

 最近、神通力を使った後、極度に疲れを感じるようになっていた。別に「家の仕事」で力を駆使する機会が増えた、というわけでもないのだが……。

 しばらく、体を休ませたほうがいいのかもしれないな。

 そう思いながら、再び窓の外へ何気なく目をやると――。

(……んなっ!?)
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