前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 校庭がにわかに騒がしくなったと思ったら、公花が大玉に乗る曲芸師と化しているではないか。

(どこをどうやればそうなる……)

 口元に手をやるが、笑いごとではない。
 頭でも打ったらどうする……あぁ言っているそばから、そっちには木が……。

 見ていられなくて、すぐに念を込めた。

 木に激突し弾かれて、落下する公花の体を浮かせ、体を垂直にして、地面に足から落ちるように調整する。神通力がどうにか間に合って、頭を打つのは免れたはず。

 ん? なにやら地面でのたうっているな。
 着地のとき、足でも捻ったのだろうか。せっかく助けてやったのに、不器用なやつだ。

「それじゃあ……蛇ノ目くん。次のセンテンスを読んでくれるかしら」
「はい」

 教師に指名されたので、意識を授業に戻し、教科書を手に立ち上がった。
 だが、本を持つ手に力が入らない。どっと体が重くなり、めまいが襲ってくる。

「蛇ノ目くん?」

 誰かの慌てたような声が耳に届いたが、返事をする余裕はなかった。

(ダメだ……目の前が霞んで、平衡感覚が……)

 天地が回るような気がして、崩れるように倒れ込んだ。
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