前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 保健室に来てから深く眠り込んでしまったようだが、体育をしていた公花が体操着の格好のまま目の前にいるということは、そんなに長い時間は経っていないらしい。

 公花が首を傾げて、尋ねてきた。

「保健の先生はいないの?」
「外せない会議があると言っていた……おまえは? どうかしたのか」

 上半身を起こしながら、こちらも問いかける。

「足をくじいちゃって」
「……あぁ、大玉に乗って転がって落ちた、あれか」
「な、なんで知ってるの……? え、起きて大丈夫!?」

 顔を紅潮させたり青ざめたりと忙しい公花。素直だからリアクションが大きいのだ。

「気分は……悪くない」

 自分でも信じられないほど回復していた。いつもなら気怠さが残って後を引くのに。

 先ほどまで見ていた夢が、関係しているのだろうか?
 また過去のことを少し思い出すことができたし、なんだか体も軽い気がする。

「……足、くじいたって? 見せてみろ」

 まだ、神通力を使うのは難しそうだが……怪我の具合をみてやるか。
 薬箱を取るために、立ち上がった。

       *

 ――時間は数分、さかのぼり。

 校庭で足を捻挫した公花は、ひとりで保健室へとやってきた。
 体育の先生には保健委員に付き添ってもらえと言われたのだが、あいにく今日は該当の生徒はお休みで。
 それなら歩けないほどでもないし、と単独で授業を抜けてきたのだが……。

「先生、すみません〜……あれ? 誰もいない?」
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