前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 普段は意地悪で、厳しくて、鬼だと思うときもあるけれど。

 いざとなると優しいし、頼りになる……ような気がする、今日この頃。

 下校しているときも、さりげなく車やバイクからかばってくれたり、困っているとなぜか駆けつけてくれたりと……。
 不思議と守られているような気がするのだ。

 前世が天敵同士だったからといって、初対面のときには偏見を持って接してしまい、申し訳なかったと思っている。

 それに昔の記憶といっても、まるで中途半端な情報。なんせハムスターと蛇がドタバタと追いかけっこしていた頃のことしか思い出せないのだから。

(もしかしたらあの後、仲直りしたのかもしれないよね! ハムスターと蛇の、種族を超えた友情とか!)

 そよそよと、穏やかな風が吹き抜けた。
 ふたりきりの、静かな保健室。

 不思議な縁を感じる彼は、黙っていると本当にかっこいいし、目の保養だ。

 熱はあるんだろうか。そっと手を伸ばし、額に触れてみる。

(あれ? 冷たい……)

 具合が悪いイコール熱がある、と考えていた公花が意外に思っていると、相手の長いまつ毛がピクリと動いて、ゆっくりと持ちあがった。

「……公花?」

 気怠げな声で名を呼ばれて。

「わっ、起こしちゃった? ごめんなさい」

 安眠を妨害してしまったことを謝った。
 寝ているときに勝手に触ってしまったことが、なんだか後ろめたく思えてくる。

 ごまかすように、夢中で口が動いた。
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