前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「……おっしゃる通りでした」
兵頭は、狡猾な笑みを浮かべながら、脇に置いていたトランクケースを、教祖の側へと丁重に押し出す。
「偉大なる神の恩恵に感謝いたします。今後も、なにかの折には、ぜひ頼りにさせていただきたく……」
教祖は静かにケースを受け取り、蓋を開けて中身を確認する。びっちりと敷き詰められているのは一万円札の束だ。
能面のような笑みを貼り付けて、教祖は言った。
「……今後ともご贔屓に」
*
──ある日の教室。
十分間の休憩時間中、クラスメイトがそばに来て、話しかけてきた。一緒に学級委員をやっている女子生徒だ。
「蛇ノ目くん、体の具合は大丈夫? 顔色がよくないみたいだけど……」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「本当に無理はしないでね。委員の仕事も、私にできることはするから……」
会話の途中、ちょうど次の授業を担当する教師が教室に入ってくる。
女子生徒はまだ話し足りなそうな顔をしながら、自分の席へと戻っていった。
(顔色、か……そんなに顔に出ているか……?)
皮膚の色素が薄いから、目のあたりに不調が出てしまうのだ。
だが、最近の疲労の溜まり具合、疲れやすさは、たしかに異常だ。
単なるスタミナ切れだと思いたいが、頻繁に眩暈、貧血を起こしていては困るので、しばらくの間は省エネを心がけたいところ。
無駄な神通力は使わないようにしよう、と心に決めたのだが──。
兵頭は、狡猾な笑みを浮かべながら、脇に置いていたトランクケースを、教祖の側へと丁重に押し出す。
「偉大なる神の恩恵に感謝いたします。今後も、なにかの折には、ぜひ頼りにさせていただきたく……」
教祖は静かにケースを受け取り、蓋を開けて中身を確認する。びっちりと敷き詰められているのは一万円札の束だ。
能面のような笑みを貼り付けて、教祖は言った。
「……今後ともご贔屓に」
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──ある日の教室。
十分間の休憩時間中、クラスメイトがそばに来て、話しかけてきた。一緒に学級委員をやっている女子生徒だ。
「蛇ノ目くん、体の具合は大丈夫? 顔色がよくないみたいだけど……」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「本当に無理はしないでね。委員の仕事も、私にできることはするから……」
会話の途中、ちょうど次の授業を担当する教師が教室に入ってくる。
女子生徒はまだ話し足りなそうな顔をしながら、自分の席へと戻っていった。
(顔色、か……そんなに顔に出ているか……?)
皮膚の色素が薄いから、目のあたりに不調が出てしまうのだ。
だが、最近の疲労の溜まり具合、疲れやすさは、たしかに異常だ。
単なるスタミナ切れだと思いたいが、頻繁に眩暈、貧血を起こしていては困るので、しばらくの間は省エネを心がけたいところ。
無駄な神通力は使わないようにしよう、と心に決めたのだが──。