前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 思うように物事は運ばなかった。

 なぜなら、唐突にトラブルを引き寄せる「問題児」がいるからだ。

「公花っ、ちょ、おまえ、またっ……そっちに行くなって……!」
「え?(ぽけー)」

 見ているそばから、厄介ごとに自ら首を突っ込んでいくちんちくりん。
 剣の「嫌な予感がする」方向へと歩いていった公花は、園芸委員が花壇への水やりの最中、誤って振りまいたホースの水を、その身に浴びていた。

「大丈夫、ただの水だし、すぐ乾くよ~」
「はぁ……そんなこと言って、風邪ひくなよ? まったく……」

 このほかにも、目の前で鳥にフンを落とされかけたり、バナナの皮に滑ったり、ひったくりに狙われたりと、心配には事欠かない。

 細事ならよいが、一緒に住宅街を歩いていて、彼女の頭めがけて集合住宅のベランダから植木鉢が落ちてきたこともあった。

 力を使わざるをえない場合は、迷いなく使って阻止したが、これでは彼女もこちらも、命がいくらあっても足りはしない。
 わざとこちらを疲れさせようとしているのかと思うほど、負の連続攻撃を繰り出してくる。

(一体なんなんだ……?)

 組織の者が関わっているのではと勘繰ったが、証拠はない。
 蛙婆女は、剣が下界の者とみだりに関わるのを嫌っている。もしかしたら公花と引き離そうとしているのかもしれないと疑ってはいるのだが――。

 そうだとしても、尻尾は出さないだろう。
 それに狙いもわからない。ただの人間である公花を排除してどうなるというのか。

(今日も家まで見送ったほうがよさそうだ……)
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