前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 放課後の勉強会の後、校門を出て、いつもの帰り道を公花と歩く。

「……前に体育の授業で捻った足は、もう平気なのか?」
「んー! もうすっかり治ったよ!」

 ぴょんこぴょんこと飛び跳ねる公花。
 本人は至って元気なようだし、悩みもなさそうで羨ま……いや、そういう一面は頼もしいし、こちらも安心なのだが。

「公花。もし家に帰ってから、なにかおかしなことがあったら……、公花? おい公花」

 振り返ると、彼女の姿は忽然と消えていた。

(どこへ行った!?)

 数秒前まで隣を歩いていたのにと、ぎょっとして周囲を見回す。

「剣く~ん……ここだよ、ここ~」

 声のしたほうに目をやると、なんと道路の舗装工事中の穴を塞いだ鉄板がずれていた。

 公花は、その穴に落ちて、二メートルほど下の穴の底から手を振っていた。隙間からすとんと入ってしまったらしい。

「なにをやってるんだ、まったく……」

 神通力を使うほどでもないので、引っ張り上げて、事なきを得る。

「怪我はないのか?」
「全然平気。今回は、足からきれいに着地したから。こう、平行移動みたいに」

 まったくどんな落ち方をしたんだ。

「おまえ、やっぱりちょっとおかしくないか。強運スキルはどこへいった? それしか取り柄がないのに、由々しき事態だぞ」

「え? いや、運はいいよ? だってほら、剣くんも一緒のときだったから、すぐ助けてもらえたし。それに、誰かの落とし物も見つけたの。穴の底に落っこちてた」
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