前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 そう言って、どこの誰のものかわからない古臭い柄の巾着袋を、「ほらねっ」と見せてくる。

「落とした人、困っていると思うから警察に届けよう。いいことしちゃったな~」
「いいことって……」

 袋の中身まで確かめたりはしないが、どう見ても、犬の散歩で持ち歩くエチケットグッズ。そんなに大事そうには見えない。
 落とし主だって、たいしたことのないものだから、そのままにしておいたのだろう。

「そんなもの、放っておけばいいのに」

「ダメだよぉ、そんなこと言ったら。私が落ちたことだって、きっと意味があるんだよ。きっとね!」

「……」

 そうか、と答える代わりに、小さく笑った。
 落ちたことにも意味があったなんて、公花らしい……。そう考えていると、

 ――カァ、カァ……。

 電線に止まっていたカラスが一羽、飛び立っていった。

(普通のカラスか……?)

 組織が監視のため使っている「式神」かもしれないと、目で追うが……。

 見分けがつかないうちに姿が見えなくなってしまった。

       *

『おまえ、やっぱりちょっとおかしくないか?』
『そんなことないってー』

 強運スキルが弱くなったと剣に言われたが、公花にはまったくそんな実感はなかった。
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