前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 たしかに剣と一緒にいるとドタバタするのだが、プライベートはいつもどおりの平常運転。今日も日暮家は平和な朝を迎えている。

「お母さん、おばあちゃん、おはよ~。少し寝坊しちゃった」

「おはよう、公花。朝ごはんできてるわよ」

「ふごふご……おはよ、キミちゃん。今日はお天気の急変に注意、だよ」

「天気予報ありがとう、おばあちゃん。折りたたみ傘、持ってくようにするね」

 炊き立てのお米に、鮭とお味噌汁。
 食卓で朝食をとっていると、今日はゴミの日だからと、母から通学前のゴミ出しを頼まれる。

「玄関に置いておくから、お願いね。……でも最近、大きなカラスを一羽、近所でよく見かけるのよ。ゴミ置き場にでも居ついちゃったのかしら。困ったわねぇ」

 桃子ママが弱った顔でそう言うと、

「カラスだって? あたしに任せんしゃい!」

 普段は温厚なおばあちゃんが漢気を発揮して、ほうきを持って追い払いに行った。
 どうもカラスと聞くと農家の現役だった頃のことを思い出し、闘志が湧き上がるらしい。

 ふと壁の時計が目に入り、飛び上がる。

「あ! わたしも、もう行かなきゃ!」

 どんなに時間がなくとも、ご飯だけは完食すべし。
 慌てて米粒を頬っぺたに詰め込んで、食器を流しに片づけて。

「ひってひまーふ(行ってきまーす)!」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
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