前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「えっ……」
公花は蒼白になった。
きっとあれだ。悪い人が弱い者を狙って、お金をむしり取る――。
教師に助けを求めたかったが、学食方面でもない渡り廊下は、お昼休み時間中ゆえに極端に人通りが乏しい。
だが、もっと人目につかないところに連れ込まれでもしたら大変だ。先手を打たねばと、震えながら声を絞り出す。
「は、話なら、ここで……! でも、お金はありません。カラアゲは、悪いことだから……」
「は? 唐揚げ?」
カツアゲの間違いだが、言った本人はいたって真面目。
相手は、意味がわからずぽかんとしている。
なにやら意表をつくことには成功したが、ピンチな状況は変わっていなかった。
「話って、なんですか?」
「いや、実は……ちょっと前から、あんたのこと、その……狙ってたっていうか」
(狙ってた!? もう勘弁して~、怖いよぉ!)
よく見れば相手はもじもじして顔を赤らめ、悪意がないことはわかりそうなもの。
しかし彼は肌が地黒なため、照れている様子は見た目では判別できない。
髪の色が金色なのも、実は趣味の競泳による塩素焼けなのである。
だが、漫画でしか見たことのなかった「不良に絡まれる」という学園あるあるのシチュエーションに、公花の頭の中は危機感に支配されていた。
怯えを見せては、つけこまれてしまう。要は、こいつは獲物にするには面倒だと思わせればよいのだ。
……キッ!
ぷるぷる震えながら、潤んだ丸い瞳で、必死に威嚇するが――。
「やっぱり……(かわ)いい……。あ、あのさ」
ズイズイッ。焦れたように、彼がこちらとの距離を狭めてくる。
(ひぃっ、睨んでるのに近づいてくる!? なんで!?)
だけどこういう困ったとき、やっぱり駆けつけてくれるのは――。
公花は蒼白になった。
きっとあれだ。悪い人が弱い者を狙って、お金をむしり取る――。
教師に助けを求めたかったが、学食方面でもない渡り廊下は、お昼休み時間中ゆえに極端に人通りが乏しい。
だが、もっと人目につかないところに連れ込まれでもしたら大変だ。先手を打たねばと、震えながら声を絞り出す。
「は、話なら、ここで……! でも、お金はありません。カラアゲは、悪いことだから……」
「は? 唐揚げ?」
カツアゲの間違いだが、言った本人はいたって真面目。
相手は、意味がわからずぽかんとしている。
なにやら意表をつくことには成功したが、ピンチな状況は変わっていなかった。
「話って、なんですか?」
「いや、実は……ちょっと前から、あんたのこと、その……狙ってたっていうか」
(狙ってた!? もう勘弁して~、怖いよぉ!)
よく見れば相手はもじもじして顔を赤らめ、悪意がないことはわかりそうなもの。
しかし彼は肌が地黒なため、照れている様子は見た目では判別できない。
髪の色が金色なのも、実は趣味の競泳による塩素焼けなのである。
だが、漫画でしか見たことのなかった「不良に絡まれる」という学園あるあるのシチュエーションに、公花の頭の中は危機感に支配されていた。
怯えを見せては、つけこまれてしまう。要は、こいつは獲物にするには面倒だと思わせればよいのだ。
……キッ!
ぷるぷる震えながら、潤んだ丸い瞳で、必死に威嚇するが――。
「やっぱり……(かわ)いい……。あ、あのさ」
ズイズイッ。焦れたように、彼がこちらとの距離を狭めてくる。
(ひぃっ、睨んでるのに近づいてくる!? なんで!?)
だけどこういう困ったとき、やっぱり駆けつけてくれるのは――。