前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
七転び目 剣の異変
体の不調は続いていて、予断を許さない状況だった。
だが先日の大きな祈祷以来、霊力を必要とする仕事は途絶えている。
もしかしたら、家の者が受注を調整しているのかもしれなかった。言葉でコンディションを伝えていなくとも、蛙婆女はそういった面では抜け目がない。
学園生活は、たいして力は使わないし、気晴らしに丁度いい。
今日も、放課後の定番となった図書室の一角で、公花の勉強を見てやっている。口には出さないが、これが一番の楽しみだ。
今は、古文の教科書の単元『更級日記』を読み進めているところ。平安時代中頃に菅原孝標女によって書かれた回想録だ。
古典なんてものは方言みたいなもので、似たような響きの言葉を覚えてしまえば、設問に答えるのは難しくもない。
だが目の前のおとぼけは定型文なんてほとんど覚えていないだろうから、まずは辞書を引きながら、テキストの横の余白に現代語訳を書かせているところだ。
「どこまでいった? 見せてみろ」
「うん」
公花から教科書を受け取り、進捗を確認する。
『――わが思ふままに、そらにいかでかおぼえ語らむ』
だが先日の大きな祈祷以来、霊力を必要とする仕事は途絶えている。
もしかしたら、家の者が受注を調整しているのかもしれなかった。言葉でコンディションを伝えていなくとも、蛙婆女はそういった面では抜け目がない。
学園生活は、たいして力は使わないし、気晴らしに丁度いい。
今日も、放課後の定番となった図書室の一角で、公花の勉強を見てやっている。口には出さないが、これが一番の楽しみだ。
今は、古文の教科書の単元『更級日記』を読み進めているところ。平安時代中頃に菅原孝標女によって書かれた回想録だ。
古典なんてものは方言みたいなもので、似たような響きの言葉を覚えてしまえば、設問に答えるのは難しくもない。
だが目の前のおとぼけは定型文なんてほとんど覚えていないだろうから、まずは辞書を引きながら、テキストの横の余白に現代語訳を書かせているところだ。
「どこまでいった? 見せてみろ」
「うん」
公花から教科書を受け取り、進捗を確認する。
『――わが思ふままに、そらにいかでかおぼえ語らむ』