前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す

八転び目 神の御使いをお迎えしました

 校庭でポールや三角コーンなどの用具の片づけを手伝いながら、公花は、ぼんやりと校舎のほうを見つめた。

 体育祭は、公花が属する赤組が、見事優勝を飾った。
 けれど勝利を喜ぶ気持ちは、半減してしまっている。

(剣くん、大丈夫かな。倒れて、保健室に運ばれたみたいだけど……)

 閉会式の後、放課後になって図書室で待ってはみたのだが、彼は姿を見せなかった。

 下校する前に保健室も覗いてみたのだが、そこにも彼の姿はなく。
 家の人が迎えにきて、帰宅したのだろうか。

 どうしてか不安で、胸の奥がチクチクしている。
 夕立に見舞われそうな、黒い雲が遠くに迫っていた。

       *

「ただいま~」
「おかえり、公花。晩御飯ちょっと待ってね。炊飯器のスイッチ、押すの忘れてたのよ~」
「うん、まだお腹空いてないから、大丈夫」
「あら、めずらしい……具合でも悪いの?」
「ううん、ちょっと疲れただけ。少しゴロンとしてくるね」

 帰宅してすぐ自室に入り、疲れの残る体をベッドに横たえた。
 眠れそうで、眠れない。

 窓を開けていても、蒸し暑いのはどうにもならない。エアコンは設置されてはいるが、なるべくつけずに節約している。

(明日は、剣くんも元気になっているといいな――)

 大丈夫。明日になれば、学校でまた会える。

 そっと瞼を閉じた。


 ――少し、眠っていたらしい。すぅっと意識が浮上していくのを感じる。

「うーん……」
 ベッドで半覚醒のまどろみを味わっていると、ふいに生ぬるい風が吹いて、頬を撫でていった。

 チリッと毛が逆立つ感覚がして、目を開く。

「――……?」

 目の前にいるそれと、視線が合った。

 白いミニサイズの「蛇」が、胸の上に乗って、自分を見下ろしている。

「……え?」
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