前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「えーと、それは、どう……だろう。うちの家族のこともあるし!?」

 どうしよう。困っているなら助けてあげたいけれど。
 でも蛇は……やっぱり、生理的に問題ありだ。

 特に、にょろにょろしたものが嫌いな桃子ママからは、許可は出ないだろう。
 どうにかうまく断る言い訳は、そして彼の安全も確保するいい案はないものかと、ぐるぐるする頭を絞っていると――。

「俺は幸運の神だ。いると金の入りがよくなるし、家族も幸せになる」

 そういえば、おばあちゃんもそんなことを言っていた。
 うーん、なにが正解か、わからなくなってきた。

「じゃあ、いっか!?」
 考えるのを放棄して、こうして利害は一致した。

       *

 安請け合いしてしまったが、最初の説得はやはり大変だった。

 家族に黙ったまま住まわせるという手もあったが、もし見つかった場合、桃子ママの心臓が止まってしまうこともありえる。
 よって正直に「白蛇が居ついちゃったみたいで、飼ってもいい?」と尋ねたところ、もちろん大反対の嵐。

 だがその後、桃子ママが引いた町内会の宝くじが大当たりを叩き出し、立て続けに懸賞が当たるという幸運が舞い込んだ。

「白蛇様のご加護だね。ありがたやありがたや」
 と、おばあちゃんの後押しもあって、ついに母も首を縦にふった。

「よく見ると、この子、可愛い顔してる。噛まないし、すごく頭が良くて、朝、新聞まで取って来てくれるのよ」

 にょろちゃん、なんてあだ名までつけて。だけど触るのはまだ無理とのことで、お世話は公花に一任された。

 まんまと居座った白蛇は、しれっとしたもので、公花の服のポケットに勝手に入って、おすまし顔。

「まぁ仲良しね~」

 いやぁ、実は鳥肌がすごいんですけども……。
< 70 / 134 >

この作品をシェア

pagetop