前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 「うーん?」と寝返りを打って瞼を開くと、目の前に細くて白い肢体が――ミニサイズの蛇が公花の頬に頭を寄せて、くぅくぅと暖を取って眠っているではないか。

「なぁぁぁぁぁぁぁーーーーー……」

 日暮家にまた、絶叫が響いた。

       *

 一方、日暮家に匿ってもらうことにした剣の側でも、苦労はあった。

 無意識に熱を求めて入りこんだ公花の布団で、危うくつぶされかけたり。

 窓の外から野良猫にギラギラした視線を向けられたりと。(怖くはないが、生物の性として、戦慄は感じるのだ)

 それに蛇の姿では、暇つぶしに本を読むことも容易ではない。公花がいるうちはいいのだが、外に出かけていたりすると退屈で仕方がなかった。

 とある日には、思い出したくもないおぞましい出来事も――。
(いや、あれは夢だ。夢だったに違いない)

 あの日は、帰宅した公花が早めに気づいてくれたからよかったものの……。剣にとっては、二度と経験したくない黒歴史となった。

「あれ? お母さん。剣く……にょろちゃん、どこいったか知らない? 部屋にいないんだけど」

「見てないわよ。あなたの布団の中か、押し入れとかじゃないの?」

 リビングで洗濯物をたたみながら、桃子ママが言う。

「いや、部屋にはいなくて……おばあちゃん! にょろちゃん見なかった?」

 ソファでおせんべいを齧っているおばあちゃんが、ふごふごと答える。

「知らんよ~」
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