前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 守られているとは知らない公花は、普段どおりのマイペースで幸運と不運の波を器用に渡っている。

 転べば小銭を拾い、警察に届ければお礼にと饅頭をもらい……わらしべ長者かとつっこみたくなるが、そんな公花がとてつもなく頼もしいと感じてもいる。
 彼女なら、苦難が襲っても自力でなんとかする、馬力で切り開いてしまうような気がするのだ。

 一方、公花のほうでも、剣に言われずとも、身に迫る危険があることは本能で察していて――。
 うっすらとだが、もっとしっかりしなければならないと感じ、気を引き締めていた。

(……剣くんの家は、彼の力を悪用しようとしているんだよね。絶対に守ってあげないと)

 なにをどうするというわけでもないが、一緒に行動していれば、かえって安心かもしれない。保冷剤も入れてあげて、中は涼しく快適であろうトートバッグを、ぎゅっと抱え直した。

       *

 四時限目の終了を告げるチャイムの後、お財布を持ったくるみと数名のクラスメイトが、公花の机のそばへ寄ってきた。

 彼女たちは、いつもお弁当を持ちよるか学食の購買で買うかなどして、お昼休みを一緒に過ごしている仲間だ。

「キミちゃん、今日のお昼はみんなで学食に集まって食べるけど、どうする?」

「あ~ごめん、ちょっと昼休み中にやっときたい用事があって、別行動する!」

「そっかぁ了解!」

 公花は友人たちと別れ、お弁当etc.を入れたトートバッグを持って、そそくさと教室を出た。
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