前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 扉の鍵が壊れている、特別教室棟の外階段。本来は立ち入り禁止の四階の踊り場は、誰も知らない秘密のスポットだ。

 鉄錆びた階段を椅子代わりにして腰を下ろし、お弁当を広げる。

「あ! お母さん、今日はキャラ弁にしてくれてる! けど、これって……」

 海苔を切り抜いてご飯に乗せた、そのシルエットはおそらく、白蛇の剣の姿だ。最初はキャーキャー言って彼のことを拒否していた桃子ママだが、今ではすっかりペットとして可愛がっているらしい。

(お、お母さん)

 黒い海苔に囲まれた、お米の白い部分が、とぐろを巻いて鎌首をもたげた蛇のイメージなのだろうが、なんだか正直、見た目が悪い。
 まぁ印象はどうあれ、味は一緒。お母さんの作るお弁当は、おいしいから!

「……さ、食べよっか!」

 気を取り直して箸を持つ。
 タコさんウインナーに卵焼き、大好きな唐揚げは最後にとっておいて。

 ブロッコリーを箸で摘まんでトートバッグのそばに持っていくと、白い頭が顔を出し、ぱくっと食いつく。

『おい、嫌いなものばかりよこすな』

「違います、栄養を考えてあげたんです。あ、だめだめ、あんまり顔出さないで」

『わかったから唐揚げもよこせ』
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