前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「日暮、おまえ、どうやって入試受かったんだ……?」

「マークシートだったんですよ。てへ」

 そう、公花はマークシート試験にはめっぽう強い。勘がよい、というか「強運」の持ち主なのである。

「いや、だって……うちは狭き門の難関のはずだぞ?」
「受験の日、めちゃくちゃ冴えてたんですよ~。それに、うちの父は冒険家なんですが、よく効くお守りを手に入れたとかで、おまえは運だけはいいから、オプションで運気のブーストしとけって外国から送ってくれた物もありまして……。あれが効いたのかな? 今もどこほっつき歩いてるのかわからない父なんですけどね~!」

 と説明しながら、あははと笑う公花。田中は絶句している。

 そのお守り袋のおかげかどうかは定かではないが、まぁ父からせっかくもらったものなので、今も首から下げ、制服の中に入れて携帯している。

「はぁ……おまえの強運スキルとやらがうらやましいよ、俺の評価も上げてくれ……」
「先生も評価とかあるんですか、大変ですね」

 田中はキッと公花を睨んで言った。

「おまえが言うな! 生徒の成績イコール俺の評価になるんだからなっ」

 癇癪(かんしゃく)を起こして怒鳴っていても、田中の言葉に嫌味はない。
 公花が「あぁこの先生、いい人だな~」などと思いながら、にこにこ笑って聞いていると、田中はひとつ大きなため息をつき、真剣な面持ちで説教を続けた。

「いいか、うちの学園はそこまで甘くない。おまえは断トツで学年最下位だ。このまま大惨事が続いたら、退学を迫られるかもしれんぞ。学園全体のレベルが下がるからな。せめて平均点をたったひとりで下げまくっている状況を改善しないと……」
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