前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
渋々ひとつ摘んで差し出すと、白蛇はそれを咥えて口をもぐもぐさせながら、ひょっとバッグの中に引っ込んだ。
この場所でなら、誰かに見られる可能性は低い。
鉄の扉が開けば、錆びた蝶つがいの音がするからすぐにわかる。蛇の小さな体を常に隠すほど警戒しなくてもよさそうにも思えた。
――だからといって油断したわけでもないのだが。
公花が気づくことは難しかっただろう。向かい側の教室棟の屋上の鉄柵から、カラスが一羽、じっと見つめていたことに。
*
もう少しで今日のすべての授業が終わる――そんなタイミングで教室に駆け込んできたのは、教頭先生だ。
「日暮さん、いますか!? すぐに家に戻ってください、ご自宅が火事になっているみたいで……!」
「えぇ!?」
突然の凶報。
取るものも取らずに、教室を駆け出た。
徒歩圏内なので、走れば十分とかからず自宅前へとたどり着く。
(嘘でしょ……)
自宅前へと来て、呆然と立ちすくむ。
目に映るはめらめらと燃える炎。けれど、燃えているのは自宅ではなかった。
家の裏には公共の空き地があり、一帯の家々のゴミ集積場にもなっているのだが、出火元はそこらしい。
地面に生えた雑草に燃え広がってしまったようで、まるで焼き畑のようになっている。赤いベールのような炎が浅く広くちらちらと揺れ、黒い煙が立ち上っていた。
この場所でなら、誰かに見られる可能性は低い。
鉄の扉が開けば、錆びた蝶つがいの音がするからすぐにわかる。蛇の小さな体を常に隠すほど警戒しなくてもよさそうにも思えた。
――だからといって油断したわけでもないのだが。
公花が気づくことは難しかっただろう。向かい側の教室棟の屋上の鉄柵から、カラスが一羽、じっと見つめていたことに。
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もう少しで今日のすべての授業が終わる――そんなタイミングで教室に駆け込んできたのは、教頭先生だ。
「日暮さん、いますか!? すぐに家に戻ってください、ご自宅が火事になっているみたいで……!」
「えぇ!?」
突然の凶報。
取るものも取らずに、教室を駆け出た。
徒歩圏内なので、走れば十分とかからず自宅前へとたどり着く。
(嘘でしょ……)
自宅前へと来て、呆然と立ちすくむ。
目に映るはめらめらと燃える炎。けれど、燃えているのは自宅ではなかった。
家の裏には公共の空き地があり、一帯の家々のゴミ集積場にもなっているのだが、出火元はそこらしい。
地面に生えた雑草に燃え広がってしまったようで、まるで焼き畑のようになっている。赤いベールのような炎が浅く広くちらちらと揺れ、黒い煙が立ち上っていた。