前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 近隣の住人が家から出てきて、道路から不安げに見守っている。

「公花……!」

 避難している人たちの中から、泣きそうな顔をした桃子ママが、おばあちゃんの肩を抱いて近寄ってきた。よかった、無事だったのだ。

「お母さん……! おばあちゃん」

 ふたりに抱きついて、家族の無事を確認する。桃子とおばあちゃんは連れ立って買い物に出かけていて、戻ってきたらこのありさまだったのだと。

 消防車を呼んでいるが、途中なにか事故でもあったのか、まだ到着しないらしい。

「いったいなんでこんなことに……じいさんが遺した家が燃えちまうよぉ」

 肩をすぼめて震えているおばあちゃんを抱きしめる。

 火の勢いはボヤというには弱くなく、このままでは公花の家にまで及んでしまうだろう。かといって個人宅の消化器では対応できそうにない。

(消防車はまだなの? 早く、早く来て……)

 焦れるように祈っていると、突如として空が陰りだし、みるみるうちに暗雲が立ち込めた。ぽつりぽつりと水滴が頬に落ちてくる。

「え……?」

 やがてザーッとバケツをひっくり返したような大粒の雨が、周辺に降り注いだ。
 突発的なゲリラ豪雨だ。

 時期的には珍しいものでもないが、タイミングが良すぎる。
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