前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
「きゃああ!」
 床が波打つように揺れて、立っていられず膝をついてしまう。

「ちょ、ちょっと……やめてー!」
「ふがー!」
 大男は興奮している様子で、ついには壁の一枚をちぎり取るように、破壊してしまった。

 倉庫を倒壊させる気だろうか? 庫内には天井収納もあって、そこにも大型の荷物がしまわれている。このままでは、それらが頭上に降り注ぐことにもなりかねない。

 だが逃げだしたくとも、背後には壁があり、前方には敵が待ち構えている。

「やめて……やめてったら、バカー!」

 すると赤眼が片手を上げて大男を制止し、大男の暴動も止まった。
 どういうつもりだろう。猶予を与える気だろうか? けれどなにを言われても、剣を渡すつもりはない。
 公花は気を張ったまま、キッとふたりを睨みつけた。

 赤眼が、にやにやと笑いながら、公花の頭上をチラリと見た。
 上がどうかしたの? ――嫌な予感がして、敵の動きを気にしながらも確認せずにはいられない。

 思い切って視線を上に向けると、棚の上にある大きな衣装箱が、乗りだすようにして傾いていた。
 箱はちょうど公花の真上の位置にある。今から避けるのでは間に合わない。

(落ちてくる――!)
 もうダメだと、目をぎゅっとつぶった。とっさに籠を体の下にかばい、屈み込む。

 ドンッ――。

 重量のあるものが落下し、続いてガラガラと崩れる音。
 埃が舞い上がり、土っぽいにおいが庫内に充満する。
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