前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 足を地面につけて振り向けば、頭を抱えてしゃがみ込んでいる樋熊と、ほうきを持った福子おばあちゃんが立っていた。

「おばあちゃん……?」

「うちの孫娘になにさらしとんじゃあ、この唐変木のすっとこどっこいが!」

 ぱしぱしぱし! はしぱしぱしぱし!

「あいたっ、いた、いたい、いたい!」

 おばあちゃんは大男の後頭部に連続攻撃を繰り出すと、最後はお尻を蹴って自分の二倍はある巨漢を地面に転がした。

「な、なにやってるんだよ、クマ……。ただのババア相手に……」

「違う。あの婆さん、変。力、吸い取られる」

 改めて見ると、樋熊の異様に盛り上がっていた筋肉やごつい体格が、小さくなったように感じるのは気のせいだろうか。

「ふんっ、このインチキ小僧どもが」

 おばあちゃんは普段とは違う、凄味のある声で言った。その姿もほうきも、発光して神々しい。

「立ち去れい。邪悪なる者よ!」

「はぁ……? ふざけんじゃねぇよ、このババア……」

 去れと言われて引き下がるような人たちではない。反撃しようと構えた黒尾――だがその目は、すぐに驚きに見開かれた。

 ナイフのごとく伸びていたはずの彼の爪が、元の人間らしい長さに戻っている。体つきもやはり縮んで、一般的な鍛えた程度の体格へと変わっていたのだ。
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