前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
 止める間もなく、黒尾は袋から龍鱗を取り出し、ひと息に口の中へと放りこんだ。

 細く長い舌の上で、性急に味わう。

「……ん~。味は……わかんねぇな。お、力が……みなぎってきたぁ!」

 ぐぐぐ、と背を丸めて、龍鱗が生み出す霊力を受け止めようとする。

 みるみるうちに膨れ上がる力が、体中を巡りだす。

「きたきたきたーーー! ……う、ぐっ!?」

 不自然に身体が痙攣した。体の中で、なにかが弾けて、強烈な痛みが走ったからだ。

「な……なんの、これしき、ぐほぁっ!!」

 大量の吐血。止まらない吐き気に膝をつく。

 駆け寄ってきた樋熊が、悲壮な顔をして叫ぶ。

「クロぉ! しっかりしてよぉ!」

「お#〇&▲*……ウギャアアッ」

 もはや言葉にならない。体内を超高速で暴れ回る霊力が、そこらじゅうの血管をぶち破り、暴れ狂っていた。
 視界が赤い。全身の穴という穴から血を噴き出し、倒れる――。

(死ぬ……? 俺はここで、死ぬのか……)

 もう、痛みは感じなかった。
 意識が、闇に吸い込まれるように、落ちていく……。

『――と、いう具合にな。おぬしごとき矮小な存在に、扱える代物ではないのだ』

 ピンと張った闇夜に、しわがれた声が響く。

「――っ!」

 瞬時に意識を取り戻した黒尾が、はっと息をのみ、目を見開く。
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