前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
       *

 その後、蛇ノ目家に帰還した黒尾と樋熊は、蛙婆女に公花から奪ったお守り袋を手渡した。

 袋から取り出された龍鱗は、台座に乗せられ、地下神殿の祭壇に安置されている。

 黒尾たちを下がらせ、人払いをしてから、蛙婆女は祭壇で輝く龍鱗を舐めるように見つめ、ほくそ笑み、やがて大仰に笑いだした。

(ついに手に入れた。力を手に入れるための宝を)

 ――龍鱗を、喰らう。
 前世の記憶や能力を一時的に呼び起こしただけの雑兵とは違う、生粋の妖である蛙婆女をもってしても、龍鱗の力を取り込むには想像を絶する抵抗があるだろう。
 だが耐えてみせる。すべてを我が力とし、神として生まれ変わるのだ。

 手を組み合わせ、一心不乱に呪詛を唱える。

「……オン、ミワカミワカ、ナラクダジャラムダ……」

 怪しげな炎に包まれた龍鱗は台座から浮き上がり、耳元まで裂けた老婆の口の中へ、吸い込まれていった。

 我が野望、成就は目の前に──。
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