前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す
十一転び目 強奪されました
「ねぇくるみちゃん、弱った神様が力を取り戻すには、どうしたらいいと思う?」
「え~? どうしたの、神頼みしたいことでもあるの?」
「うん、まぁそんなところ」
「そっかぁ。そうねぇ、信仰を集めるとか、お供え物するとか……?」
突然の怪しい質問にも関わらず、きちんと向き合ってくれる友人は貴重だ。
自分は強運だが、特に人の縁には恵まれていると思う。
放課後、公花は図書室のいつもの席で、民俗資料の本を調べてみることにした。
本棚の高い位置にある手の届かない本を、代わりに取ってくれる人は、今はいない。
目を覚まさない剣の回復を待っていることしかできないなんて、そんなのは嫌だ。だから、できることがあればなにかしたいと思ったのだ。
なにせ帰宅部ならぬ勉強部で、スパルタ顧問教師であった剣は病気休職中。やることがない……わけではないのだが、自由にできる時間はたっぷりある。
そばから手離さないバッグの中に向けて、念じた。
(早く元気になって、また勉強教えてよ、剣くん……)
耳に涼しい声は、返ってはこない。
*
――土曜日。
「公花、今日、壁紙張り替えの工事の人が来るから……あらどこか出かけるの?」
「うん、ちょっと図書館に」
自転車の鍵を引き出しからつまみあげながら、母に行き先を告げる。
結局、学校の資料では参考になるものがなく、町の公共図書館へ行ってみることにしたのだ。
桃子ママが目を見開いた。
「公花が休みの日に勉強っ……」
そこでショックを受けるのはなぜなの、お母さん。
「にょろちゃんのこと、調べようと思ってるんだ」
白蛇が冬でもないのに眠り続けていることは、桃子ママも知っている。原因不明でペットショップにも相談に行ったが、なにもわからなかったと事情も工作済みだ。
桃子ママは頷き、目尻を緩めた。蛇の生態について調べにいくのだと理解したのだろう。
「そう……そうね。偉いわ公花。にょろちゃんはもう家族みたいなものだもの。早く元気になるといいわね」
「うん……行ってくるね」
「夜は公花の好きなハンバーグにするわね」
「わ、やった!」
心配をかけぬよう、いつもの自分で。
やる気を増したような風を見せながら、家を出た。
「え~? どうしたの、神頼みしたいことでもあるの?」
「うん、まぁそんなところ」
「そっかぁ。そうねぇ、信仰を集めるとか、お供え物するとか……?」
突然の怪しい質問にも関わらず、きちんと向き合ってくれる友人は貴重だ。
自分は強運だが、特に人の縁には恵まれていると思う。
放課後、公花は図書室のいつもの席で、民俗資料の本を調べてみることにした。
本棚の高い位置にある手の届かない本を、代わりに取ってくれる人は、今はいない。
目を覚まさない剣の回復を待っていることしかできないなんて、そんなのは嫌だ。だから、できることがあればなにかしたいと思ったのだ。
なにせ帰宅部ならぬ勉強部で、スパルタ顧問教師であった剣は病気休職中。やることがない……わけではないのだが、自由にできる時間はたっぷりある。
そばから手離さないバッグの中に向けて、念じた。
(早く元気になって、また勉強教えてよ、剣くん……)
耳に涼しい声は、返ってはこない。
*
――土曜日。
「公花、今日、壁紙張り替えの工事の人が来るから……あらどこか出かけるの?」
「うん、ちょっと図書館に」
自転車の鍵を引き出しからつまみあげながら、母に行き先を告げる。
結局、学校の資料では参考になるものがなく、町の公共図書館へ行ってみることにしたのだ。
桃子ママが目を見開いた。
「公花が休みの日に勉強っ……」
そこでショックを受けるのはなぜなの、お母さん。
「にょろちゃんのこと、調べようと思ってるんだ」
白蛇が冬でもないのに眠り続けていることは、桃子ママも知っている。原因不明でペットショップにも相談に行ったが、なにもわからなかったと事情も工作済みだ。
桃子ママは頷き、目尻を緩めた。蛇の生態について調べにいくのだと理解したのだろう。
「そう……そうね。偉いわ公花。にょろちゃんはもう家族みたいなものだもの。早く元気になるといいわね」
「うん……行ってくるね」
「夜は公花の好きなハンバーグにするわね」
「わ、やった!」
心配をかけぬよう、いつもの自分で。
やる気を増したような風を見せながら、家を出た。