没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「い、いえ…そんなことは…」

面食らって返事に困っていると、老侯爵はよいよいと手を振る。

「まあ、仕方ないのじゃ。この家は特殊じゃからな。わたしは所詮外部の人間だから口出しはできぬ…が、マリーナは母親と何度となく言い争っておった。最後の最後に母親の味方をしたわたしを軽蔑してあの娘は…家出したのじゃからな」

「そうなんですか?」

「ああ。まあよい。今日はゆっくり過ごしなさい。案内は侍女のエリーに聞くのじゃ」

エリーですと名乗ったこれも年をとった古参らしき侍女が前へ進み出た。

「フィリシティお嬢さま。侍女のエリーにございます。お部屋にご案内いたしますわ」
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