没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
この宝石は母の遺言通り信用できるところに売らなければ…。

王都に行くしかないわね…。

フィリシティはさきがけの手紙を王都に向けて送った。

父親にはこのルビーを売ることを伝えた。
さすがに母親の形見にまで手をつけないといけないと知り、今はおとなしくしているようだ。

父がおとなしい今の間に王都でルビーの売約を済ませてこなければ…。

10歳になった弟のハリーは聡明ではあったが、まだ小さい。
それでも、弟にしばらくここを任せるしかない。

フェリシティーはハリーを呼び寄せ、言い聞かせた。

「よく聞いて。ハリー。今まであなたには黙っていたけれど、もう10歳になったのだから、知っていなければならないわ」

「はい。姉さま」

ハリーは我が家の窮状について気づいているだろう。けれどちゃんと説明してやらなければならない。
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