没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「16歳になられて、そのお部屋での教育がはじまったのですが、それからマリーナ様はルイーズ様と言い争われている姿をよくお見掛けするようになりました。今までご両親に反抗されているお姿を見る事はなかったというのに、常にお怒りになり、お父上にもわたしたち使用人にも常にお怒りになられているのがありありとわかるのです。そしてある時、お父上を罵倒しているマリーナ様をお見かけしたその次の日、マリーナ様はこの屋敷から出奔されたのです」

「……」

当時のことを思い出したのか、エリーはハンカチを取り出し、目頭を押さえている。

それ以来母に会っていないのだから乳母としてはつらいことだろう。
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