没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
グランドン侯爵は侍女をつきそいにテラスで日光浴をしていたようだ。

「どうした?」

やはり体調はいいらしく顔色もいい。

「おじい様。わたくし、秘密の部屋に選ばれたようですわ」

それだけ静かに伝えると、老侯爵は一瞬だけ目を見開いた。

「そうか。よいのか?」

「はい。覚悟はできました」

母がどうしても近づくなと言っていたクランドン侯爵家。
けれど、この家から母が譲られたと言っていた宝石が何らか非常に重要な意味があったというのなら、そしてもし仮に何かそのせいでミカリオン王家に迷惑をかけていたとすれば、それを解き明かして、わびなければならない。

それがクランドンの血をひく、自分の使命なのだとフィリシティは思ったのだ。
たとえ、わが命を懸けることになったとしても。

曲がったことが大嫌いな自分だからこそ。

「ならば、近々、陛下に後継者の届を出そう」

「はい。おおせのままに」

覚悟はできた。
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