没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「僕が?ですか?」

ハリーはそのエメラルドの瞳を大きく見開いた。

「わたしはルビーを売るために王都に行かなければならないから、1か月以上留守にすることになる。今はルビーのことで気落ちしてらっしゃるからいいけれど、またいつ突然うまい話がお父様のもとに訪れるかなんてわからないもの。きちんと見張っていてほしいの」

「姉さま。僕は…僕にできるでしょうか?」

「できるわよ。あなたは賢いもの。いずれにしてもわたしたちで切り抜けていく他ないのよ。あなたが成人するまでは」

瞳の色が綺麗なエメラルド色をしていること以外はフェリシティーと瓜二つの顔をしているハリーはぎゅっとこぶしを握り締めた。

「僕がもっと早く大人になれれば…」

「大丈夫。一緒に頑張りましょう」

「わかりました。がんばってみます」

ハリーなら大丈夫…。

不安を打ち消すように自らの胸にそう言い聞かせて、その3日後、フィリシティは意を決して王都に向けて出発したのだった。
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