没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
2.王都へ
王都には何度か来ているが、いつも思うが、気後れしてしまう。

辻馬車と乗り継いで安宿を渡り、ようやくミカリオン王国の王都ミノスに降り立ち、立ち並ぶ華やかなお店のショーウインドウと行きかう人々の華やかないでたちを見て、フィリシティはため息をついた。

華やかな場所が嫌いな訳ではない。場違いな気がしてしまうだけで…。

もし自分が裕福な貴族の生れであればとてもワクワクして楽しいだろうと思いながら、それでも現実はコレだもの…とボンネットのひさしを深くかぶりなおす。

特に不細工というわけではない。
けれど、栗色の髪に栗色の瞳という平凡な容姿に中肉中背の平凡ないでたち。
そして、もともとは母のドレスだったものだから素材はいいものではあるが、繕いに繕いを重ねた流行落ちのドレス。
令嬢とは思えない、かさついた手。

これじゃぁ、気後れするのも仕方ないじゃない…

やはり自分には場違いなところだわ…。

もたもたしていても仕方ないわ。
急ごう…。

フェリシティーは4年前に母と一緒に来たときの記憶をたどりつつ、叔母である、ハンナ・トンプソンの屋敷に向かって歩き出した。
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