没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「わかったわ。いろいろあるのね。何も言わなくていいわ。ただ、わたしたちはあなたが幸せになることを祈ってるわ。何かあれば頼ってね」

「ありがとう。おばさま」

涙が出そうだったけれどなんとか耐えて、ローマンの手をとったまま、会場を歩く。

「大丈夫か?」

なによ。馬車の中ではさんざんこき下ろしていたくせに。

「大丈夫ですわ」

むっすり言ったところで、後ろの方から声がした。

「フィル?フィルだよね?」

よく知っているその声に振り向いたら、そこには警備中のハーヴィの姿があった。
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