没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました

栗色の髪に栗色の瞳の若い女が自分の下でワナワナと震えながら険しい表情をしている。

女だと気づいて少し焦ったが、草が一面に生い茂っておりフカフカしているので体や頭を強打しているということはないだろうと安堵する。

女の表情に、おびえているくせに怒っているようなその２つの感情を認め、さらにその女が美しいことに気づき、その服装から裕福ではない貴族だなと推測をつけ、いったいなぜこんな貧乏貴族の美しい女に自分が襲われているのだろうかと考えてみたがまったく思いつかなかった。

「ダ、ダメですっ」

さらにその女は組み敷かれているという自分が１００％不利な状況下においても気丈にも眉をキッとつりあげて、何がなのかわからないが「ダメだ」と何かを止めようとしている。後ろから襲い掛かって来た時もたしか「ダメです」といっていたような気がする。

「なにがだ？」