没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「フィリシティ。まぁまぁ。とても綺麗になったわね。こんなに美しいのにデビュタントもしていないだなんて。そろそろお相手を見つけてあげなければならないのに、兄さまったら何をしているのかしら」

ひしと姪を抱擁する。

フィリシティは抱擁に答えながら、『お世辞にもならないわ』と内心苦笑する。

こんな借金まみれの伯爵家の令嬢を嫁にのぞむ者などいない。
ましてやこの平凡な容姿。

どうしろというのか。

「ハンナおばさま。ご機嫌うるわしゅう。とてもお久しぶりですわ。無理を言ってごめんなさい。ひと月ほどでまた領地に戻りますから。どうかその間こちらに滞在すること、おゆるしくださいませ」
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