没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「さぁ。フィリシティ」

レオンがそっと手を離そうとした。
思わずフィリシティはギュッとレオンの手を握りしめる。

「殿下。お願いです。一緒に」

「いいのか?」

お互いの掌にお互いの体温を感じながら、フィリシティはレオンのその濃いブルーの瞳を不安そうに見つめると、レオンは問題ないと微笑み、うなづいた。

フィリシティはゴクリと唾を飲み込んだ。

緊張の一瞬。

何かが起こることはなんとなく本能で感じ取っていた。

おそるおそる手折ってきた枝を木彫りの枝の上にかざす。
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