没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました


そうこうしているうちに、建国祭の日となり、夜会の時間が近づいている。

レオンが迎えを寄越すと手紙をくれたので、今、リナたちは大忙しだ。

「殿下が今日のために用意してくださったドレスと宝石、とてもお似合いですわ」

「栗色の髪はおろされている方が美しいのですわー。ほんとうに綺麗なお色…」

朝から人形のように入念に身体を綺麗にされ続け、気がつげば鏡の前には輝かんばかりに美しい女性が出来上がっていた。

「お母様?」

母は子どもの自分から見ても美しかったが、着飾った自分はまるで母のようだとその時初めて思った。

「まあ。マリーナ様」

エリーが涙ぐんでいる。

そのドレスを着て老侯爵に挨拶に行くと、老侯爵も絶句した。

「ふぁっふぁっふぁっ。マリーナかと思ったぞ。殿下のお供をするのじゃな」

「はい。」

「そうか。ひとつだけ言うておく。そなたがやりたいと思うことをしなさい。後悔だけはせぬようにな。マリーナのようになってはならぬ。わたしはそなたが何を選ぼうと認めるからのう」

「はい。おじいさま。ありがとうございます」

その後、殿下のお迎えが来たのでフィリシティは馬車で宮殿入りした。
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